町工場×ジャンカラ
B32号室
Be in Natureルーム
(盛光SCM、桑山真弓氏 コラボ)
(盛光SCM、桑山真弓氏 コラボ)
Interview
町工場とジャンカラがコラボレートし、東大阪ならではの技術やプロダクトを使ったコンセプトルーム「Be in Natureルーム」を創りました。 照明器具やダイキャスト部品の製造を事業とする盛光SCM 草場寛子社長、現代アート作家・空間デザイナーの桑山真弓氏に「Be in Natureルーム」のコンセプトについてお話を伺いました。
お二人の活動について
村田
早速ですが、草場社長から盛光SCM様が普段どのような事業をされているかご紹介いただいてもよろしいでしょうか?
盛光SCMには二つの事業があります。 一つは板金加工で、店舗用の照明器具をデザインから完成品まで作る事業。 もう一つは、金型を作り、その金型に溶かしたアルミを入れて複雑な形状の工業製品のパーツを加工して、メーカー様に納める事業。 両方とも素材は金属なんだけれども、製造の手法が違う町工場二つが合併しているという感じです。
草場社長
村田
草場社長が代表になられてから、新しいことをどんどんやられていると思うのですが、そういったことも少し教えていただいてもよろしいでしょうか。
私が13年前に代表になって、言われたものだけを作るのではなく、自分自身が商品企画から製作・販売するところまでやるため、空間に必要needな光lightの造語からNEEL(ニール)という照明のプライベートブランドを作りました。 そのブランドで初めて作ったのが、このALED(アレッド)というコードレスランプ。 ヘラ絞り加工というのが、うちの会社の発祥で、そのヘラ絞りの職人の技術を主役にしたコードレスランプをイタリアミラノの展示会に2年間出展しましたね。
草場社長
村田
今回コンセプトルームに使わせていただいているPLATREE(プレートリー)についてもこの流れで生まれたものでしょうか?
そうです。 私達は商品を通じて、ヘラ絞りの職人の技術や生き方をメッセージとして伝えていますが、PLATREEではさらに癒し空間を作りたかった。 お家やオフィス、病院などどこであろうと自然の一部を空間に取り入れる”A Piece of Nature”というコンセプトで商品開発をしました。
草場社長
今は金太郎飴のように同じ空間を作るのではなく、ジャンカラのようにコンセプトを打ち出した空間が求められている。 私は、都会であっても、緑に囲まれ、まるで森にある木々たちの下で、木漏れ日を感じれるような癒し空間を作りたかったんです。
草場社長
村田
ありがとうございます。 次に草場社長が力を入れている「こーばへ行こう!」というオープンファクトリー活動についても教えていただけますでしょうか。
東大阪は市の面積に対して工場の数が密集している割合がダントツ日本一なんですよ。 私ら町工場って、ブランドメーカーの新商品とかを立ち上げたりするので、今まで関係者以外は何十年も立ち入り禁止にしていたんです。 そのおかげで市民の人たちは町工場で何を作っているのかわからない。 東大阪市内の大学に通う学生は東大阪でほとんど就職しないし、市のことも知らないんですよ。 それで東大阪市と近畿大学の先生が、2018年に町工場を一日貸してくれないかと尋ねてきた。 何をするのって聞いたら、町工場を開放したいと。 市民の人たちが町工場を見て、楽しんでもらえるイベントを企画しようということで、ガイドツアーやワークショップをしたり、ライブや落語をしたりっていうイベント企画をたてて、業界を越えた人たちや市民の皆さんと一緒に楽しみながら、「こーばへ行こう!」を盛り上げてきました。
草場社長
途中から市役所が、委託事業として「こーばへ行こう!」を開催し始めました。 去年ぐらいから、ボーダレスをテーマにして、工場だけじゃなく、商業、エンターテイメント、スポーツなど異業種の人たちとコラボしたイベントにしようということで、工業の「工」ではなくて交流の「交」の交場(こーば)にしようと。 ちなみに、今年は、11月18日(金)・19日(土)の2日間開催を予定していますよ。
草場社長
村田
エンターテイメントのパートでは今年からジャンカラも「こーばへ行こう!」のメンバーになって、一緒に東大阪を盛り上げていければと思います。 草場社長はデザイナーやアーティストとも積極的にコラボレーションされていますが、そこにはどういった想いがあるのでしょうか。
デザインを担うデザイナーとそのデザインを形にする職人は元々同源だったんですよ。 時代とともに分業になったけど、デザイナーと職人は元々同源なのだから、2つが1つになって積極的にコラボレーションしていこうと。 一つの製品をデザイナーと職人がタッグを組むことで、デザインと唯一無二な技術でコンセプトに合った商品を町工場から産地直送でエンドユーザーに届けるという活動をやっていきたいんです。 今回、ジャンカラの空間づくりは自然がテーマ。そこで、同じ世界観で日々取り組んでらっしゃる桑山さんにオファーさせていただきました。
草場社長
村田
デザイナーと職人の関係性で言えば、今回はデザイナーの立場で桑山さんにもコンセプトルームのデザインにご参加いただきました。 桑山さんもどういう活動されているか教えていただいてもよろしいでしょうか。
大学時代から現代アート作家として活動をしていて、インスタレーションアートというものをやっています。 私が表現するインスタレーションアートというのは、単純に空間を作ることではなくて、人がその空間に入ることによって全てが調和して、その人それぞれの空気感で作品がどんどん変わっていくような作品です。 その流れで、お店のディスプレイやビルのモニュメントを作ってほしいといった仕事が入ってくるようになり、学生のときに自分で感じて響く空間を創造するという意味の「感響創造クーハウス」という屋号を作って、そのまま活動を始めました。
桑山氏
当時は建築とかインテリアの勉強はしていなくて知識がなかったのですが、やっぱり空間を作りたいという想いがあったので、大工さんがいる工務店に行って、お金はいらないから店舗を作る場所に入らしてほしいと頼み込みました。 毎日現場に行ってお掃除係から始めて、職人さんたちと仲良くなり、「壁ちょっと立ててみる?」「コンクリートで床を作ってみる?」とか言ってもらいながら、いろいろやらせていただきました。 そこから店舗やインテリアのコーディネートのお仕事を任せてもらえるようになって今に至りますね。
桑山氏
村田
桑山さんのようなインスタレーションアートや現代アートみたいなものを実際の店舗やビルを対象にやられている人はやはり少ないのでしょうか?
他にそういう人は見たことがないですね(笑)
桑山氏
村田
そうなんですね。 桑山さんの作品の特徴についてもう少し教えていただいてもいいでしょうか?
今はFeel the Earthというコンセプトで作品を作っています。 Feel the Earthというのは私達みんな地球の一部って意味ですね。 また、有機的空間芸術”Organic Atmosphere Art”という言葉も掲げています。 なぜこの名前をつけたかというと、自然からエネルギーをもらって生命力を表現すること、そして、何よりも大事なことは、人も含めてすべてのものが空間とともに共鳴しあいながら関係性の中で生きている。 変化していっている。 ということが私の中の大きなテーマなんです。 ただ、それを表現する言葉がうまく見つからなかったときに、たまたまミラノで出展することがあって、そこで多くの人に#Organic Artとか#Organic AtmosphereなどSNSでタグ付けされたんです。 こういう言葉を使うと、一発で海外ではわかってもらえたので、そのまま使うようになりました。
桑山氏
お二人の出会いと過去のコラボレーションについて
村田
それでは次にお二人が出会ったきっかけや過去のコラボレーションした際のエピソードもおうかがいできますか?
出会ったのは靭公園の近くにある、アーティストが集まるワインバー。 ブランドメーカーとして、私もミラノに出展したり、ミラノサローネに何年も毎年通うと、デザイナーと出会う場を参加者同士で紹介して繋がっていくわけよ。 そのワインバーに行ったときに、桑山さんとたまたま会うんやね。
草場社長
そうですね。あと、ミラノサローネでも会いましたね。
桑山氏
意外と大阪で会えなくても、海外行くと結構会うわけ。 で、お互いそこで話をするときに私は”A Piece of Nature”、桑山さんは”Feel the Earth”。 これ、ビジョンよく似てるよねっていうので、共感する会話が多かった。 一番最初にコラボレーションをしたのは、「こーばへ行こう!」のイベントかな。
草場社長
村田
「こーばへ行こう!」ではどういうことをされたんです?
「こーばへ行こう!」は物を売ることが目的ではなくて、町工場の中に森ができるということを表現したかったのよ。 それを表現するために、ただ単にPLATREEを使うだけじゃなくて、桑山さんがアートの力で雲を作ったり、雨を降らしたりということしてくれた。
草場社長
Be in Natureルームについて
村田
それでは今回ディープ布施店のプロジェクトについて、始まったときのことを教えてもらえればと思います。
ジャンカラが空間に意味を持たせたい、地元の人から愛される空間を作りたい、っていう想いを感じたよ。 その近隣の人から愛される空間を作るならば、その空間が出来上がるまでの素材であったりとか、私らだったら照明とか、他の会社の技術とか、作る過程から地元企業の人たちを巻き込んでストーリーと一緒に空間を作ろう!という意欲に繋がったって感じかな。 私ら町工場というと、ショールームも販売店舗を持ってない。 でも、先ほど桑山さんが言ったようなジャンカラが生きた空間を作っていこう、そこにいろんな市民の人たちが老若男女入ってくるわけで、その時にPLATREEや東大阪の技術に触れてもらおうという意味で、私らは賛同しました。
草場社長
村田
ありがとうございます。 桑山さんにも質問ですが、コンセプトルームにBe in Natureという名前をつけた意図を教えていただけますでしょうか。
やけくそで歌いに行くとかそういう形じゃなくて、始めはやけくそでも、最後には本当に何か気持ちよく心を解放されたような気持ちになるような部屋になればと思っています。 気持ちよく過ごしていただけたらいいなという想いで作りました。 Be in Natureという言葉の通り、自分たちも自然の一部だということを表現したかったんです。 PLATREEのコンセプトが自然の一部を表現する優しい木漏れ日であったり、そういった要素があるので、工場地帯のガチャガチャした中でも、森の中に入って奥深く抜けていけば明るく光る木漏れ日がある。 そんなところで歌うのはすごい気持ちいいことじゃないかなと。
桑山氏
村田
実際に現場に入って絵を描きはじめて、途中で描こうとしていた内容を変えたことなどありましたか?
やっぱりその空間で一番心地の良い色やリズムがあって、今回は森の木漏れ日とかそういったイメージでグリーンの絵の具を壁に塗っていましたが、緑だけで表現すると、とても単調になるんです。 本当の自然の中には土の茶色や青空の光など様々な色が溢れています。 実際に描いていく中で、ピンクや紫の色をちょっと入れるだけで、生きているエネルギーが感じられるようになったと思います。
桑山氏
村田
私も現場で作業されているのを見ていてそれを感じました。 元々予定になかった小鳥を壁に描かれていたのはどんな意味があるのでしょうか?
小鳥は私が描きたくなっちゃうんです(笑) あの鳥は情報や幸せ、命や種を運んできてくれる象徴になっているんです。
桑山氏
村田
そうだったんですね。 それでは、どのようにこの部屋をお客様に使っていただきたいかについても教えていただいてもよろしいでしょうか?
毎日時間に追われて、忙しい時でも、たまには異空間に身をゆだねて気持ちをスイッチするような場所になってほしい。 今までは歌うためにジャンカラに行くってなっていたけれども、歌うこと以外の目的でもジャンカラに行きたいと思う空間として、あの場所があってほしいなって。
草場社長
私はカラオケに行くと、そんなにノリノリの歌が歌えないんです。 でも、みんなが盛り上がる歌を歌わないといけないっていうプレッシャーってありますよね。 でも、あの場所でなら歌いたい歌が歌えるんじゃないかな。 しっとりした歌でも盛り下がったらどうしようって思わずに歌えるんじゃないかなって思います。
桑山氏
照明の調光が効くので、例えばライトアップすると、お昼の森になるし、光を絞ると夕方の暗闇の森も表現できるので、光の楽しさを感じながら自分が今どういうシーンを求めているかによって楽しんで欲しいね。
草場社長
今後の活動について
村田
それでは最後に今後どのような活動をしていきたいかお二人に語っていただいてもよろしいでしょうか?
製品ができて、その製品が空間に入ると空間作りができて、そこが終わりではなくて、実はそこからがスタート。 これから市民の人たちにどう空間を楽しんでいただけるかというステージにオープン以降はなると思うんですよね。 もちろん、ジャンカラの店ってありきたりの店じゃなくって、スナック的な内装コンセプトが既にかなり面白いし、異業種、市民の人、町工場とジャンカラがどうコラボレーションしてどういう楽しい町作りをしていくのかをこれから共創していくっていう感じかな。 元々、布施ってノリがいいので、音楽が鳴ったらもう自然と人が集まってくる習性が盆踊りであるから(笑)
草場社長
私はいろんな人が参加して完成する表現をできる限り続けていきたいです。そういう表現をしていくと、今回みたいな自分が思ってもいなかった効果が生まれるし、ドラマみたいなストーリーがたくさん出来上がるんですよね。 色々な人や企業とコラボレーションするというのはすごく楽しくて、続けていきたいなと思います。
桑山氏
きっとジャンカラが布施の商店街を盛り上げてくれると思っています。 あそこの通りは6/24からはジャンカラ通りです(笑)。 どうやって街を盛り上げていくかというのを意識しながらみんなで楽しい時間というのを作っていこうよ、どうせ生きるなら楽しく生きようよ!ということで、私らも協力はするけれども、一緒になって布施を盛り上げてほしいなと。 また活気溢れるような、たくさんの人が行き交う商店街になってほしいな。
草場社長
村田
そうですね。布施以外からも人がたくさん来るような店にしていきたいなと思います。 布施自体が今、ディープな街として注目されているので私たちも一緒になって街を盛り上げていけたらなと思います。
お店作りで大学とか町工場とかアーティストとコラボしたカラオケは聞いたことがないので、そういう意味では、なんちゅうかな土着というか、灯台下暗しみたいな。 単純に、地元の人たちと一緒にカラオケの空間作ったよ!いっぺん見に来て、めいっぱい楽しんでいって~!って感じ。 布施のまちを、おおいに盛り上げていきましょうね!
草場社長
村田
ありがとうございます。 本日はどうもありがとうございました!
草場 寛子
株式会社盛光SCM 代表取締役社長
金属部品加工や店舗用照明器具の製造メーカーの三代目社長。町工場の新しい存在価値を生み出そうと、下請け体質からの脱却を掲げ、自社ブランドNEELは世界へ挑戦しようとしている。また、こーばへ行こう!実行委員長として、東大阪市を人情味あふれ活気に満ちた町にしようという思いで、製造業の領域を越えた地域活性化につながる活動にも積極的に取り組んでいる。「みなさんの暮らしに感動を!」
盛光SCM ホームページ https://www.seiko-scm.co.jp/
「こーばへ行こう!」 ホームページ https://ko-ba.jp/
桑山 真弓
Organic Atmosphere Artist
現代アート作家であり、空間デザイナー。 人と自然が一体化するような感覚を求め、有機的空間芸術として作品制作を続けている。 空間づくりでは、人と空間が共鳴しあう心地の良い世界観を意識し、企業や店舗、ホテル 、またイベントや舞台などの空間演出、壁画制作、オブジェ制作、インテリアデザイン等 様々な仕事を行う。 唯一無二のジャンルを問わない表現力と作風から様々な国から注目を浴びている。
桑山真弓氏 ホームページ https://mayumi.world/